ご挨拶

香りは文化のシンボル。広大無辺な香の世界をともに楽しみましょう。

香りは文化のシンボル。広大無辺な香の世界をともに楽しみましょう。

 香道は、茶道、華道、能などとともに中世に誕生、婆沙羅(ばさら)大名はじめ一部上流階級の贅を極めた芸道として発展してきました。なかでも香道は、それら中世芸道のエッセンスを凝縮した文化として洗練度を高め、当時としては非常に稀少な南アジア産の天然香木を研ぎ澄まされた感性で判別するという、独自の世界を構築するにいたりました。当志野流は、香道発祥以来の歴史と伝統を、父子相伝によってひたむきに守り続け、絶えることなく現代に継承して参りました。

 香道を始めようとする方のなかには、香道は難解だとのイメージをお持ちの方もいるかと思います。確かに香道は、礼儀作法・立居振舞など約束事の多い世界です。上達するにつれ、古典文学や書道の素養の若干は求められます。しかし、香道の原点は何よりも、香りをそのものを楽しむことにあります。嗅覚は人間の五感のうち、残された最後のものです。多種多様な香りを聞き分ける、あるいは一つの香りを追求する、その繰り返しによって新しい感受性が生まれ、やがて自分だけのイメージ世界が創造できるはずです。

 香りは文化の水準を示す重要な要素です。そして、それを支えるものは、香りを楽しもうとする積極的な気持ちです。広大無辺なこの香の世界で、ともに学び、ともに楽しもうではありませんか。

志野流香道 第二十世家元 蜂谷 宗玄